ある日、新聞の折り込に入っていた旅行会社のチラシ「北海道岬巡の旅」に目が釘付けになった。私はこれまでにも数回北海道を訪れており風光明媚な人気の観光地はだいたい網羅したと自負していた。しかしこのチラシはなんだ? 北海道の地図が頭に浮かんだ。あの突先この突先すべてが有名な岬だった。そんな最果ての岬を制覇したいという欲望にかられ、ツアーでありながらもひとり旅を満喫できそうに思えこのツアーに即座に申し込んだ。それから出発日までがどんなに待ち遠しかったことか!
1泊、2泊の短いひとり旅は数えきれないくらいしたけれど長期のひとり旅は、四国の岬を愛車で巡って以来のことであった。こんな旅が出来るのもまわりの理解があればこそ、半分リタイアさせて貰っているお陰とみんなに感謝したものだ。そして出発日はやって来た。集合場所の新大阪バスターミナルへ行くと既にバスが待っており参加者の8人と一緒に乗車し京都駅前で2人をピックアップして舞鶴港へ向かった。22時舞鶴港に到着し23時発のフェリー「はまなす号」に乗船し予約していたB個室へ行くと残念なことに通路に挟まれた窓のない部屋だったが眠るだけと我慢して持ち込んだサンマのかば焼きをつまみにビールを飲み早々に就寝した。
はまなす号は16810t、旅客数746人、全長224.5m、幅26.0m、航海速度30.5ノット、スタビライザー付きでヘリポートもある大型フェリーなので揺れもなく快適な船旅の始まりとなった。
翌日は5時に起床し船室の狭い洗面室で洗面をして船内のオープンデッキ、レストラン、グリル、カッフェ、大浴場、サウナ、マッサージルーム、シアタールーム、ゲームコーナー、船舶電話等々の設備を暇つぶしに散策した。オープンデッキに出て船尾から雄大な日本海の大海原を眺めるが視界には海原以外には何も見えない。朝食はレストランで旅行のメンバーと一緒に静かに黙々と食べた。今回の参加者の男性4人と女性6人はそれぞれ一人参加であった。食後は船尾の大型フェリーのヘリポートの写真をスマホで撮る。携帯電話は繋がらないので家人へ現況をラインで送信することもできないのが残念であった。フェリーからの景色には全く変化がなく手持無沙汰で船室に戻りテレビを見て過ごした。12時に昼食のアナウンスがあったが、昨日の深夜に食べたビールとおにぎりが胃もたれてしており昼食はパスする。食事時間は1時間に限られている為に異なる時間に食事をすることは出来ないのは残念であった。夕食の三食丼は美味しかった。食事中の男性の口数は少なく静かに食事しているが、女性は賑やかに話をしていた。快適なフェリー旅の夕暮れのひとときに、オープンデッキに出てみると海風が涼しく、椅子に座って海原を見ていたが夏のこの時期でも船上は寒かった。美しかった夕日が沈み、夕闇が迫った頃にフェリーは小樽港に到着した。港にはチャターのタクシーが3台待機しており分乗して札幌市内のホテル札幌ロンシャンに向かった。チェックインして荷物を部屋に入れて小腹が減っていたので繁華街のすすきのまで一人徒歩で出かけ酒を飲みながら焼き鳥を摘んで明日からの岬巡りにワクワクしながら就寝した。