平成の時代が幕を下ろし、新たに令和の時代を迎えた。
平成を振り返ると、東欧諸国で民主化革命が起きる中で東西ドイツを隔てていたベルリンの壁が崩壊するなど劇的な出来事が相次いで起こった。民主主義対共産主義の大国冷戦構造の米ソ対立も次第に米中の新冷戦構造へと変化してきた。
国内では明治以降初めて戦争体験をすることなく終えた時代であったがテロや災害の試練に直面した時代でもあった。オーム真理教による地下鉄サリン事件や阪神淡路大震災、東日本大震災とそれに伴う原発被害、熊本地震、そして昨年7月の西日本豪雨災害は岡山県にも大きな被害をもたらした。天皇皇后両陛下が絶望と不安でいっぱいの被災地を慰問され、国民目線で膝をついて聞いて下さるお姿は多くの人に希望と力を与えて下さった。
新たに令和の時代を迎え、天皇陛下は江戸時代後期の光格上皇以来200年ぶりに上皇に即位された。上皇陛下は皇太子時代を含めて岡山県に12回お目見えになった。
私にとっても忘れられない思い出がある。平成20年4月17日の園遊会にお招き頂いたことである。一生に一度あるかないかのことと緊張しながらも光栄に存じつつ皇居護衛官に護られ赤坂御苑の門をくぐったあの日を昨日のように思い出すことが出来る。新緑の美しい御苑内の玉砂利を歩き、御料牧場で大切に育てられた鹿肉のソテーとやわらかい焼鳥、オードブルと飲み物をおいしく頂戴した。散策中、招待客の中に早稲田大学元総長の西原春夫先生を見つけ恩師との懐かしい再会も果たした。
宮中吹奏楽団の君が代演奏が始まり、天皇皇后両陛下のお出まし、微動だにせられず順に皇族方のご挨拶を受けられるお姿は荘厳で感動を持って拝見していた。
雨の降る中、両陛下がお廻りになり、「岡山からですか? スゴイ雨ですね。」傘を差さずに挨拶をする私たちに皇后さまが「お寒くありませんか? どうぞ傘をさしてください。」と声をかけてくださった。神々しいお姿とやさしいお言葉が今も耳に残る。続いて他の皇族方と会話がはずみ皇太子殿下、秋篠宮ご夫妻ともご挨拶をさせて頂いた。おりしも降り続く雨の中、早々に退出されたので、本当にあっという間の出来事だったが、この貴重な体験は一生の宝となっている。
天皇陛下は皇太子時代に各種全国大会、国体、国民文化祭、全国障碍者スポーツ大会、インターハイなど何度も岡山においでになっている。2013年の航海訓練所の新造船進水式と2016年インターハイ開会式にご出席の時、私は岡山県公安委員を拝命しており警備体制の検討会議を重ね、実際の警備の伴奏車にも乗車した。いつもにこやかに笑顔を絶やさずに県民に接される姿に頭が下がる思いであった。
令和が平和と安寧を維持し争いのない夢と希望に満ち溢れる美しい時代になることを心から願っている。