まずもって本年もよろしくお願いします。今回の社長ブログは、昨年訪問したインドについてです。
11月3日から12日までインドにめっき同業者13名で視察に行ってきました。中国の次はインドが熱い、日経ビジネスの発展する都市ランキングでもインドの ニューデリーとムンバイが1・2位です。今回のメンバーのほとんどがインドは初めてですが、みなさん自分の目で見て経営判断に活かすという人たちばかり。 とは言え、過去にインドに行かれた方々の話を聞くと「必ずお腹をこわす」「帰ってからも体調不良」「スケジュール通りに移動などできない」などなど行くの が億劫になるような話ばかりで、覚悟を決めての視察になりました。
成田空港からシンガポールのチャンギ空 港を経由してデリー空港に到着。日本を11時に出発し、到着は現地時間の23時過ぎ、実に16時間かかりました。ニューデリー郊外のホテルに深夜にチェッ クインし、数名でホテルのまわりを散策。まぶしい明かりと音楽が鳴る方向へ歩くときれいな寺院がありました。突然「靴を脱げ」と言われ驚くと、どうやらお 寺の中に入るのはもちろん、周囲でも靴を脱がなければならないようでした。シーク教のお寺が祭事をやっているらしく、深夜でしたが、家族連れでお参りする 人や、お寺のまわりで寝泊まりする人がたくさんいました。
翌日からは視察です。自動車組立工場におじゃまするも、労働争議などが理由で現在は工場見学は中止しているらしく、自動車業界の動向やインドについ て会議室でお話を伺いました。改善活動や5S活動など日本と同じ工場運営がされていました。余談になりますが、今回の視察は当然にあらかじめ交渉して訪問 先を決めていたのですが、約半数の訪問先が直前の1週間やインド滞在中に変更になりました。理由は、交渉していた担当者がライバル会社に転職したとか、5 名程度しか受け入れできないとか、「え?」「いまさら?」みたいな理由です。こんな視察初めてです・・・。数社見たローカルのめっき会社は、まだまだ安全 面や作業環境では信じられない状態が多く見られた反面、このコストとどう戦うのか考えさせられました。
その中でとても印象に残った自動車部品会社があります。すばらしい工場運営をされていました。 工場独自に「5つの喜び(5-JOY)というコンセプトを浸透させ、「社会・お客様・取引先様・株主様・私たち(従業員とその家族)」みんなが喜びを分か ち合えるようにするにはどうするかということに取り組んでいます。「和顔受悟」と言って何よりも笑顔を大切にしています。たしかに工場を見せてもらうと笑 顔がたくさん。キーワードは「Happy at Work(職場に笑顔を)」。他にも例えば、献血やエイズ教育をしたり、コーポレートガバナンス教育といって経営理念やものづくりについて教育したり、感 情をコントロールする教育をしたり、社員とその家族が集まるフェスティバルや運動会を開いたり、社員に子どもが生まれると取締役が家を訪ねてお祝いした り、社内報をつくったり、委員会活動をはじめて(&活性化し)安全や2S、女性問題に取り組んだり、女性の地位向上(インドでは女性はもともと働かせな い)のために女性監督職の教育をしたり、たくさんの女性を雇用もしています。しかも社員からどんどん声(提案)が出てきているそうです。工場では組立工程 は人がずらっと並んだ人間ベルトコンベア方式ですが、手待ちが1個で作業中が1個という状態を維持して生産しています。「私は早くできる」とさっさと自分 の仕事をやってしまう人が多く、ラインのバランスを理解させるのに苦労したそうですが、何とかできつつあるそうです。多能工化は品質面で心配があるので、 今は賃金レベルが低いこともあり、この単能工を集めた生産方式ベストとのことです。
話は変わり、インドで初めて経験したことが2つ。走行中のバスの座席に座っていて天井に頭をぶつけたこと(プチ無重力!?)と、走ってくる牛たち5頭にひかれそうになったこと。どちらもびっくりしました。
インド滞在中に学んだ"インド":①塀際はトイレ。②首をかしげたらYES(OK)。③牛はとても神聖であり、弁当を2つ作って出かけ、道で出会った牛にそ の1つをあげる。④最近、上流階級では牛を食すこともある(お祈りすればOK!?)。⑤インド(ヒンズー教)では、目上の人に奉仕することは当たり前であ るからして、「ありがとう」という単語はあるが使わない。⑥インドで発見されたこと、インドから始まったことベスト3:1)「0(ゼロ)」ゼロの概念を発 見した。2)チェス。3)大学。⑦食事はすべてカレーもしくはカレー味。ルーはなく、お店によってスパイスの配合が違うので味も違う、どれもおいしい。基 本のカレーは、マトン、チキン、ポーク、ベジタブル、豆、ジャガイモ、ホウレン草の7つで、そのうちいくつかが出てきます。⑧パキスタンと不仲で、テロを 身近に感じていることこと。インドは親日らしく、親しい国1位はアメリカ、2位が日本だそうです。中国は嫌いだそうです。なぜならパキスタンに武器を与え ているから。
少しお腹が緩んだメンバーが2名いましたが、ほぼ全員がなにごともなく視察を終えました。この生存率はとても珍しいようです。
今回のインド視察は、みんなに何を伝えればいいのか難しいというのが正直な感想ですが、インドは、WEBによって誰もが簡単かつ自由に世界の情報を見聞きし ている中で、何千年も続く貧富の差や身分の違い、男女の差別などたくさんの矛盾や問題を抱えながら、でもそれらをごちゃまぜにいっしょくたにして抱きかか えて走っている国でした。人々から溢れ出てくるエネルギーはすごかったです。
ドットヨム121号:2011年11月